Saturday, February 23, 2008

発掘現場3DCG(改訂版)をお披露目

花園大学 発掘日誌: 現地説明会にも記事がありますが、今日、平安京二条三坊八町の発掘調査の現地説明会がありました。自適館300教室がいっぱいになるくらいの人が見に来ましたが、残念ながら花園大学の学生は数人って感じでしたね。情報歴史学コースの学生は残念ながら1名も来ませんでしたが(涙)、来年度から情報歴史学コースに来る予定の1回生が1名(たぶん)来てくれてました。

今回、現地説明会にあわせて、突貫工事で(一週間で!)復元CGを作り、ほんの数分ですが説明会でお披露目しました。作成期間が短かったこともあり結構いいかげんなところがたくさんあるのですが(どこがいいかげんなのか当ててみよう)、評判は上々だったようです。

今回は現地説明会用ということで、Google Sketchup 6だけを使ったざくっとした復元でした。このソフトは、こういう用途には本当に便利。しかしこれからは、高橋先生とかとも話し合って、方向性などをきちんと決めてからちゃんとしたCGを作りたいですね。その際、情報歴史学研究室: 発掘現場の写真撮影での写真を使った地形の復元も必要になってくるでしょう(と言うか、そのために写真を撮ったんだけど)。

学内で発掘をして、それを学内でCG化できる(しかもスタッフはほとんど教員と学生)ってのは、けっこう珍しい例だと思います。

Wednesday, February 13, 2008

第2回 文化遺産のデジタルドキュメンテーションと利活用に関するワークショップ

情報歴史学研究室: 【イベント】第1回 文化遺産のデジタルドキュメンテーションと利活用に関するワークショップで紹介したイベントの第2回目です。今度は奈良で、3月8〜9日の2日間。
私は残念ながら、9日には別件(やはり奈良で発表)があるので参加は無理なんですが、8日には都合をつけていきたいなぁ。

写真測量やデジタル高槻城など、ゼミでやったことや卒論のテーマに関係する発表もあるようですね。皆さん、都合が付くならぜひ参加しましょう。

Wednesday, February 06, 2008

口頭試問終了(2007年度)

2月6日、情報歴史学ゼミ生の卒論口頭試問が終わった(他のゼミはまだ終わってないが)。以下、簡単に講評。

川端康司「歌川広重『名所江戸百景』における色が鑑賞者に与える影響」

SD法を使ったアンケートによって、広重の作品における赤色がどのような影響を鑑賞者に与えているのかを研究した論文。先行研究をよく調べ、着実にやってきた点は評価したい。

この論文の問題点をあげれば、現代人の感性についての研究なのか、美術史的な研究なのかについて、きちんと区別されていないという点であろう。前者であれば広重の作品を使う理由を美術史の先行研究だけで言うことはできないが、この論文では美術史関係の先行研究の整理が中心である。逆に、美術史的な(歴史的な)研究であれば、アンケートをベースにした方法は意味がない。

副査の福島先生が言って下さったように、自身の「感性」を無批判に作品分析に適用してしまう美術史の研究者が実際におり、その人たちの態度を「勉強」してしまったのかもしれない。

土屋美穂「キトラ古墳の三次元復元と公開・利用に関する研究」

当初、3DCGを作成することを目標にしていたのだが、間に合わなかったのが残念。これから作るとのことなので、ぜひ卒業までに完成させて欲しい。

内容的なことを言うと、先行研究の調査については副査の高橋先生(昨年まで奈良文化財研究所にいて、今もキトラの調査に関わっている)からお褒めを頂く程なので、よくがんばったと思う。もっとも、本論文においては復元と保存がごっちゃになっており、復元に関する先行研究(情報の欠如部分を埋めるための周辺情報など)が少ないのが残念。このような混同は、実際に3DCG作成を始めていれば自ずと気づき、解消される部分であると思うので、繰り返しになるがCGの開発に入れなかったのが惜しまれる。

文字利光「丹波国分寺のCG復元とその問題」

こちらも上の土屋論文同様、CGを作れなかったこと、そのために復元と保存を混同するミスを犯していることが問題点として指摘できる。

加えてこの論文では、作成したCGを学校教育や博物館展示などで利用する場合を想定した議論を行っているのであるが、その中で「博物館には人が来ないとはじまらない」→「そのためには楽しさ、エンターテインメントの要素が必要」という議論を展開している。このような提言は、特にかつて「マルチメディア」が流行した頃、博物館情報学や教育工学などにおいてさかんに言われたことであるのだが、真に受けない方がよいのではないか、少なくとももう少し批判的に検討すべきだったのではないか、と思われる。

山本拓矢「GPS活用による姫街道研究」

GPSを手に、実際に姫街道を踏破した努力は買いたい(ケモノ道のようなところまで分け入ったとのこと)。ただ、そうして作ったデータが、実際の姫街道研究にほとんど活かされていないのは残念(山本さん曰く、GPSのデータよりも、データを取りに現場に行ったことでわかったことの方が大きかった、との由)。

先行研究の整理の部分については難点が多い。姫街道関連の先行研究をまとめる作業は割に早めに終わっていたのに、周辺分野の先行研究の調査がほとんどなされていなかったり、また先行研究から問題の所在を導くのも、時代が異なるものを一緒くたにして論じているところがあるなど、適切ではない部分も見受けられる。