Sunday, December 23, 2007

デジタルアーカイブの「標準化」に向けて

東京でこんなイベントがあるそうです。

東京大学大学院情報学環・学際情報学府学際情報学専攻
21世紀COE「次世代ユビキタス情報社会基盤の形成」
 第14回シンポジウム

デジタルアーカイブの「標準化」に向けて
〜次世代アーカイブとユビキタス技術が拓く未来〜

概要
 21世紀、人間社会のあらゆる場面においてデジタル化された情報
を活用するユビキタス情報社会へと向かおうとしています。そのた
めに必要な要素技術は着実に開発が進んでおり、様々な実証実験を
通じてその技術的な実現性が確かなものとなってきています。そし
て、ユビキタス情報社会基盤を活用した様々なサービス(ユビキタ
スサービス)が社会に普及し、私たちの日常生活を豊かにする日も
近づいております。また、携帯電話やICカードといった先行事例に
みられますようにユビキタスは強い革新性を持っており、単に便利
というだけでなく様々な分野において変革をもたらすものと考えら
れます。

 本シンポジウムでは、これまでのユビキタスサービスを俯瞰しつ
つ、ユビキタス情報社会基盤がもたらすサービスへのイノベーショ
ンについて議論したいと思います。そして、ユビキタスサービスが
社会に普及するための課題を探ります。

開催要項

日時
平成20年1月15日(火) 午後1:30 〜 午後6:00 (開場 午後0:00)

会場
東京大学 鉄門記念講堂
  (東京大学へのアクセス)
  http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
  (鉄門記念講堂(医学部教育研究棟)へのアクセス)
   http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_02_09_j.html

プログラム

  受付開始  12:00(アーカイブデモタイム 12:00−13:30)
  開演    13:30
  開会挨拶(吉見俊哉) 13:30−13:40
  (東京大学大学院情報学環長)
  基調講演(坂村 健) 13:40−14:20
  (東京大学大学院情報学環副学環長・教授、
   東京大学21世紀COE「次世代ユビキタス情報社会基盤の形成」
   拠点リーダー)

  報告(田良島哲) 14:20−15:05
  (独立行政法人 東京国立博物館)

 (休憩・アーカイブデモタイム  15:05−15:45)

  パネル討論      15:45−17:45
  (田良島哲・小川千代子・加茂竜一・杉本重雄・
   馬場章(コーディネータ))
   小川千代子(国際資料研究所)
   杉本重雄 (筑波大学)
   加茂竜一 (凸版印刷株式会社)
    コーディネータ:馬場章
    (東京大学大学院情報学環教授、東京大学21世紀COE
     「プロジェクトA」責任者)


  閉会挨拶(馬場 章) 17:50−18:00


主催
東京大学21世紀COE「次世代ユビキタス情報社会基盤の形成」

共催
凸版印刷株式会社

入場
無料

お申込み方法
定員:300名(先着順)
申し込み先:coe-symposium14@ubinsoc.org

 氏名・所属・連絡先をご記入の上、上記の電子メールアドレスで
お申し込みください。なお申し込みの受け付けのお返事はいたしま
せん。定員が超過しお断りする時のみご連絡いたします。
 お申し込みの時にご記入いただきました個人情報につきましては
、本シンポジウムの参加者管理の目的以外には使用いたしません。
 会場には駐車場はございませんので、車でのご来場はご遠慮くだ
さい。
 事前申し込みをしていない場合でも、当日シンポジウム会場に余
裕があれば参加していただけます。
 手話通訳や要約筆記等のサポートが必要な場合は、申し込み時に
お申し出ください。

Thursday, December 20, 2007

Saturday, December 15, 2007

「展示と来館者をつなぐ」ことの難しさ

みんぱくゼミナール 第355回「展示と来館者をつなぐ―みんぱくにおけるミュージアム・コミュニケーション」に、ゼミ生T君と参加する。開会に先立って、ゼミナールに10の倍数回出席した人を表彰していたのだが、120回出席していた人がいてビビる。月に1回として、10年近く来ておられるということになる。すげー。

それはともかくゼミナールであるが、興味深かった点を列挙しておくと、
  • 博物館に来る人は、必ずしも知的な学習を求めているわけではなく、人とのつながりを求める(デート? (^_^;;)/非日常的な体験を求める/自分探し等々のために来る人もいる。典拠はこれ:

  • 展示者の意図とは違うところで客が満足することもある=インタラクティブ・ミスコミュニケーション(橋本裕之「物質文化の研究」〔『民族学研究』62-2〕)
  • 展示される側からの異議申し立て→展示される側の展示作業への参加
    • 「展示と来館者をつなぐ」というタイトルの講演だったためか、「展示される側」の視点はちょっと曖昧だった気もする。
  • 展示する側(博物館や研究者)/展示される側/展示を見る側の三者がモノの価値づけ、解釈、記憶の付与に平等に参加できる場としての博物館。
    • もし「平等」を追求するのなら、博物館という価値づけのシステムの存在自体がある限り、展示する側と展示される/見る側との非対称はどんなに工夫しても解消されないように思う。それを隠蔽して(博物館を自明のものとして)「平等」を目指すより、博物館の権力性を可視化する方がいいような気がするが、いかがだろうか?
    • ちなみに、民族誌において似たようなことを目指している川村清志さんらのチームの活動は参考になるだろう(最近の成果だと、じんもんこん2007の岩谷洋史・川村清志・星野次郎・行木敬・大崎雅一・森下淳也「人類学研究支援環境DWB による調査資料の詳細化と客観化―部分と全体の視点を許容するDWB―」など)。情報歴史学研究室: 電子メディアを飼いならすも参照。
この講演を聴きながら頭に浮かべていたのはWikipediaニコニコ動画など。T君と“ニコニコ展示”は可能か?可能だとしたらどうやってやるか?なんて議論をする。

ゼミナールの後、常設展示や企画展「世界を集める−研究者の選んだみんぱくコレクション」でPSPを使った閲覧支援システムを体験する。常設展示における「動画も見られる音声ガイドの拡張版」としてのPSPはなかなかよいと思ったが、企画展の方のPSPは正直、必要性を感じられなかった。情報歴史学コースでも携帯電話を使った閲覧支援システムを作った時があるし、今度はiPod touchを使って作ってみようかな、なんて考えていたのだが、改めて難しさを痛感する。

帰りしな、珍しく?黒山の人だかりができていたので、何だろうと思ったら万博記念公園では今日からライトアップらしい。

Saturday, December 08, 2007

第12回情報知識学フォーラム:簡単なレポート

情報歴史学研究室: 2007年度 第12回情報知識学フォーラム 〜情報の発掘と再生〜に行ってきたので、簡単な報告…と言っても、昼まで大学で用事があったので、聞けたのは2番目の五島さんの発表の途中から。

朽津信明「蘇る古墳壁画の世界—装飾古墳のデジタルコンテンツ化—」

上に書いた通り聞けず(3DCGを使うものらしい)。すまん、つっちー。論文は今度のゼミに持って行くので許してね。

五島敏芳「アーカイブズ情報の電子化・保存と共有化動向」

この発表については途中からだったということもあるし、五島さんの発表は歴博の共同研究班などで何度か聞いていたりもするのでここでは書かない。

ただ、彼が最近ひっぱりだこの人であることについては指摘しておきたい。最近、「デジタル・アーカイブ」という言葉をよく耳にするが、アーカイブの本来の「(公)文書の(永久)保存」という意味でのデジタル・アーカイブは驚く程少ない。不思議なことに我が国では、文化財のデジタル化という程度の意味で「デジタル・アーカイブ」という言葉を使ってしまっている(私も、あまり使いたくはないが、そういう用法で使うことがある)。五島さんは、本来的な意味でのデジタル・アーカイブについて語れる数少ない人だったりするので、ひっぱりだこなのである。

江草由佳「戦前期教科書の電子化・保存とその応用」

「電子化・保存」の話はなつかしい感じ(マイクロフィルム+PDF)。むしろ、その前段階で概説された研究対象(資料)としての教科書の話はおもしろかった。資料としての教科書の価値は、レアだから価値があるという文化財的なものではなく、ある世代のほとんどの人が目にしているという圧倒的な普及率を誇るメディアであるという点であるとのこと。確かにそうだ。

あと、個人的には、サンプルとして回覧された満州国の教科書にあったモンゴル相撲の記事が気になった (^_^;;

矢野環「古典籍からの情報発掘—再生そして生命誌、ネットワーク—」

一番楽しみにしていた発表。バイオ・インフォマティクスなどで使われる数理モデルを文献学に応用したり、茶人の人間関係をグラフ・ネットワークとして分析する、というもの。意外に思われるかもしれないが、DNAはGCATの四文字で書かれたテキストなので、テキスト・データベースの技術(全文検索とか)がそのまま応用されているし、写本を比較して伝写系統を分析するみたいなことと同じようなことも行われており、そのためのツールもたくさん公開されている。文献史学の史料批判などにも充分応用可能な方法なのである。

休憩時間に矢野先生とちょっと議論したのだが、数理的なモデルで出てきた結果をどう評価し、解釈するかについては、はっきりとした方法は見出されていない。今後、考えていきたいところ。

田良島哲「文化財情報の発掘と再生—「モノ」と「テキスト」のはざまで—」

文書がどのようにして「古文書」になり、後に研究者が「史料」として見出して、場合によっては国宝などになったりするのかを概説した上で、史資料のデジタル化には各分野(文献史学、書誌学、古文書学、考古学etc...)の方法論に基づいた「見る目」の共有が必要なのではないか、と問題提起。

方法論の(コンピュータを考慮した)共有には、方法論の形式化ないし記述が必要なわけだが(上の矢野先生が使っている数理モデルは、文献学の一部を数学的に形式化したものとも言える)、これが一筋縄ではいかないですよねー、という議論を、会終了後、ほんの短い時間ではあったが田良島さんとすることができた(文書などの材質に関しては、客観的な記述が非常に難しいらしい)。

こういう議論ができるのが、ライブで発表を聞く醍醐味である。遅刻しちゃったけど、行ってよかった。

Wednesday, December 05, 2007

「漢字文化三千年」 国際シンポジウム

情報歴史学研究室: 12月の関連イベントに追加情報。以下のイベントが京大で行われるようです。

漢字文化の全き繼承と發展のために
京都大學21世紀COE 東アジア世界の人文情報學研究教育據

「漢字文化三千年」 国際シンポジウム

セッション一:漢字と情報学—新しい世界へ
プログラム
  京都大学 国際交流ホール
  14:00 ~ 17:00
  • 「仏教学文献研究におけるコラボレーションの可能性と問題点について」
    永崎研宣(山口県立大学)
  • 「「心」の問題 − 文学研究のための資料をめぐる一考察 −」
    明星聖子(埼玉大学)
  • 「A scheme of Chinese conceptual schemes: the Thesaurus Linguae Sericae」
    Christoph Harbsmeier (何莫邪)(オスロ大学・北京大学)
  • 「唐代研究ナレッジベースからの教訓」
    ウィッテルン クリスティアン (京都大学)

Wednesday, November 28, 2007

構築主義の入門書

今週火曜日の3回生ゼミで赤間亮・川村清志・後藤真・野村英登・師茂樹「人文科学にとっての“デジタルアーカイブ”」(『人文科学とコンピュータシンポジウム論文集』、IPSJ Symposium Series Vol. 2004, No. 17、2004年12月)の私の「問題提起」を読んでいる際、構築主義について簡単に説明した(デジタルアーカイブの主な対象になる「古典」とか「名作」というものは、作品そのものに原因がある(=本質主義)のではなくて、社会的に構築されたものである、というような文脈)。

そこで紹介した構築主義の入門書をあげておこう:

Thursday, November 22, 2007

Canvas使えるかも

HTMLの次期バージョン「HTML 5」というのが開発中である。
その中にcanvasというタグがあって、これの表現力がけっこうすごい。下にあげたようなやつがぐりぐり動く(対応ブラウザはFirefox、Safari、IE。IEはプラグインがいるらしい)。



Web上で図や3Dを表示するのはいろいろあったけど、これだけのことができて、しかもGoogle大将軍が肩入れしているとなると、かなり有望かもしれない。

Tuesday, November 20, 2007

12月の関連イベント

ちょっと間が空いてしまいました。12月の情報歴史学関連イベントをリストアップします。12月は毎年、イベントラッシュですが、今年は関東によってますね。

なお、3回生はどれか(関連するものであれば、下記以外のイベントでも可)に参加してレポートを書いてもらうことになります。

Sunday, September 02, 2007

Friday, August 31, 2007

お隣さん

新校舎の建設に伴う発掘調査が始まり、調査を担当する考古学研究室のブログが始まりました。
そのうち情報歴史学研究室も、三次元写真測量などで参戦したいと思いますので、乞うご期待?

Monday, August 20, 2007

【イベント】東京国立博物館「博物館情報学研究会」

こんな案内を頂きました(以前のポストも参照)。

東京国立博物館「博物館情報学研究会」のご案内

東京国立博物館では「博物館情報学の構築」を研究課題の一つとして調査研究を進めていますが、このたび「博物館業務と所蔵品データベース」をテーマに、下記の要領で公開研究会を開催いたします。残暑厳しい折ですが、多くの方のご参加をいただければ幸いに存じます。
日時
2007年8月29日(水)13:30から16:30まで(会場受付は13:00から)
会場
東京国立博物館 平成館小講堂(ご来館の道順は当館ウェブサイトからごらんください)
報告者
  • 横溝廣子 氏(東京藝術大学大学美術館 准教授)
  • 井上卓朗 氏(日本郵政公社郵政資料館 資料専門員)
  • 村田良二(東京国立博物館情報課 研究員)
各機関の所蔵品データベースの構築と利用に関する報告と、全体的な意見交換を行います。
参加お申し込み
参加をご希望の方は、(1)ご氏名 (2)ご連絡先(メールアドレスまたは電話番号) (3)おさしつかえなければ勤務先、在学校名等のご所属 をお知らせください。

宛先:
電子メール joho0829@cr.tnm.jp(半角英数字)
ファクシミリ 03-3822-8502
郵便:〒110-8712 台東区上野公園13-9 東京国立博物館情報課情報管理室
※受信したお名前、メールアドレス等の個人情報は、今後当館の研究会等の催しのご案内に利用させていただくことがございます。

【イベント】Historical Maps and GIS

名古屋大学環境学研究科が主催する“International Symposium on Historical Maps and GIS”と、人文地理学会・歴史地理研究部会の第108回研究会との共催とのことです。
  • 日時:8月23〜24日
  • 会場:名古屋大学東山キャンパス文系総合館7Fカンファレンスルーム
プログラムはこちら(PDF)

しかし最近、研究会とかのサイトはブログかWikiが主流みたいになってきてるなぁ。

【イベント】歴史知識学の創成

こんなイベントの案内を頂きましたので、こちらでもお報せします。

歴史知識学の創成 科学史・文化史研究と歴史知識学

2007年9月15日(土)13:00~17:00 東京大学文学部215番教室
  • 基調報告
    • 石川徹也(史料編纂所・前近代日本史情報国際センター・教授)「歴史知識学の創成を目指して」
    • 佐藤賢一(電気通信大学・准教授)「『明治前日本科学史』と科学史研究のその後」
    • 末柄豊(史料編纂所中世史料部・准教授)「『大日本史料』における学芸史料」
    • 相田満(国文学研究資料館・助教)「『古事類苑』と和漢古典学オントロジ」
  • 研究報告
    • 「『明治前日本科学史』の検索システム構築-歴史情報を対象とする「知識の構造化」の具現例-」(史料編纂所・大日本印刷(株)共同研究プロジェクト)
    • 「『明治前日本科学史』を対象とする”日本の科学・技術者人物情報”抽出システム-明治前日本科学・技術者人物DB構築を目指して-」(史料編纂所・NTTデータ(株)共同研究プロジェクト)
詳しくはこちら(PDF)

Tuesday, June 26, 2007

[ニュース] 3次元の古代ローマをフライスルー

WIRED VISION / 3次元の古代ローマをフライスルーなんてニュースがあったのでご紹介。

街をまるまるデジタル化したというだけでもなかなか興味深い記事だけど、それ以外でも、
Frischer所長はこの3次元モデルを、ローマ研究者たちがオンラインフォーラムとして利用できる「修正可能な『Wiki』」にしたいと考えている。
という部分には注目したい。市街ひとつをまるまるデジタル化するだけでなく、それを不特定多数の人がいじれるというのだ。この手の「よってたかって」何かをしようというプロジェクトは常に、異説をどうするか、複数の説を許容する場合のビューはどうするか、などの問題を抱える。このプロジェクトがどうなるのか、注目したい。

Wednesday, June 06, 2007

ゼミ旅行2007 in 天橋立

6月5日、3回生、4回生ゼミ合同で天橋立にゼミ旅行に行くことに。総勢17名(田中先生、2回生2名も参加)でにぎやかな感じである。

天橋立は世界文化遺産を目指しているらしい(→京都新聞電子版: 天橋立の国内暫定リスト追加申請へ 世界遺産検討委)。ちなみに3月まで花園大学に居られた山田邦和先生は、世界遺産検討委委員の一人らしい(→平安京閑話: 天橋立を世界遺産に!、の巻)。山田先生の話では、この会議に美術史ゼミの福島先生の書かれた本?が資料として出ていたらしい(福島先生は「天橋立図」で有名な雪舟の専門家)。なにげに花大に関係者が多い話題だったりする。それはともかく、情報歴史学はデジタル・アーカイブなどで文化財行政とつながっているが、今回のこのニュースは国内外の文化財行政に関して思いを巡らす良いきっかけである。

幸い天気にも恵まれ、渋滞もなく、最初の目的地である丹後国分寺跡と京都府立丹後郷土資料館へ到着。国分寺跡は、基壇跡だけが往時を偲ばせるものの、基本的には草ぼうぼうのありがちな更地なのだが (^_^;; 土地が割と斜面なのが興味深かった。個人的には、奈良仏教萌えということで、写真をとりまくる。

郷土資料館の常設展示は小規模(花園大学歴史博物館・第2展示室よりちょっと広いぐらい?)、民俗関係の資料が割とたくさん展示されていて、田中先生の解説に耳を傾ける。近くに民家も保存されていて、部屋に上がったり民具に触れたりできるのが、今時の展示って感じである(ハンズオンってやつですな)。展示について考えるのは、情報歴史学研究室: アートの大切さ情報歴史学研究室: 子ども文化教室でも書いたように、情報歴史学的に重要なテーマの一つである。ここに限ったことではないが、博物館・美術館の展示を観るのは、いろいろな面で勉強になるのである。

その後、天橋立の北側、籠神社籠神社 - Wikipedia)へ。ここから各自自由行動で、1時間半後に天橋立の南側(智恩寺)に集合というシナリオである。とりあえず目の前に神社があるということで、皆でお参り。ちょうど茅の輪くぐり(茅の輪 - Google 検索)をやっていたので、皆でくぐる。

ちょっと脱線するが、神社の参拝の作法とかも、皆、意外に知らないんだねー。最近、細木数子氏が神社の参拝の仕方に異議を唱えたことについて、神社界から大きな批判を浴びたりしたけど(西野神社 社務日誌 - 二拝二拍手一拝という作法はとても勉強になる)、京都の大学の史学科の学生としては、そういうのも勉強しておいてもらいたいものである。

さてその後はいくつかのグループに分かれて、天橋立を観光。私のグループは砂浜をぶらぶら歩きながら、海に入ったり(したのは私ともう一人だけ (^_^;;)、木陰でご飯を食べたりしたのだが、けっこう強い日差しで、両腕は真っ赤に日焼けしてしまった。海はとてもきれいであった。

歩きながら、上に書いた世界遺産のことなど、「漁業をやってる人への影響は?」とか「海水浴場のままで、文化遺産にできるのかね?」とか言いながら、学生たちと議論する。実家では魚取りがどーのとか、しょーもない話をしながら、親睦を深めるのもまた旅行の目的の一つ。集合場所の智恩寺(ちなみに花園大学と縁の深い臨済宗・妙心寺派)は、小さいお寺ながら中世〜近世ぐらいのおもしろいものがたくさんあった。

Monday, June 04, 2007

ARCADIA解禁!

考古学の高橋先生から教えていただきました。
「千葉県における古墳時代中期関連の資料を中心にデータを収録しています」とありますが、よくある目録データベースではなく、研究文献全文データベースです。検索してみれば(例えば「鬼高」とかで)わかりますけどかなり膨大な量のデータが入っています。

しかも、GIS情報と結びついていて、地理的に近い遺跡や、Google Mapsと連携した周辺地図表示機能がまたすばらしい。

Sunday, May 13, 2007

情報処理学会・第74回人文科学とコンピュータ研究会発表会

言わずと知れた(知ってるよね? (^_^;;)人文科学とコンピュータ研究会の例会である。
5月25日(金)、龍谷大学瀬田学舎での開催なので、都合がつく情報歴史学コースの学生は、できるだけ参加すること。最新の成果に触れることで(その場では全然わけがわからなくても)必ず力になるのだ。

情報知識学会・第15回年次大会

東京での開催だが、情報歴史学関連の発表もいくつかあるので、紹介しておこう。
プログラム
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2007年5月25日(金)
12:30 受付開始
13:00〜13:50 総会
14:00〜15:40 一般発表(1)
  1 レファレンスデータに対するNDCの自動付与
○原田 隆史(慶應義塾大学), 江藤 正己(慶應義塾大学大学院),
大西美奈子(NRIネットワークコミュニケーションズ)
2. 引用論文における引用箇所間の近さをとらえる尺度
江藤 正己(慶應義塾大学大学院)
3 SRU/SRWを用いた教育図書館資料の書誌検索システムの構築
○江草 由佳(国立教育政策研究所),
高久 雅生(情報・システム研究機構 新領域融合研究センター)
4. 著者とキーワードの関連性に着目した研究領域ブラウジングシステムの試作
○レボウィッツ 紀子(筑波大学大学院), 松村 敦, 宇陀 則彦(筑波大学)
15:50〜17:30 シンポジウム「Web2.0時代の情報システム」
パネリスト : 岡本 真(Academic Resource Guide)
兼宗 進(一橋大学情報処理センター)
    (終了後、外部の別会場で懇親会開催を検討中です)

2007年 5月26日(土)
9:20〜10:35 一般発表(2)
5. 営みのLatticeの構造化とアブダクション
福永 征夫(アブダクション研究会)
6. 音楽著作権についての歴史的研究 〜革命期から19世紀のフランスを
    中心に〜
石井 大輔(筑波大学大学院)
7. 科学技術文献の解析・可視化における辞書の活用について
○甲田 彰, 坂内 悟(科学技術振興機構)
10:50〜12:05 一般発表(3)
8. ユーザの Web 閲覧履歴を用いた検索支援システム
○堀 幸雄(香川大学), 今井 慈朗(香川大学), 中山 堯(神奈川大学)
9. 古典籍説明文からのドメイン知識の抽出
○長塚 隆(鶴見大学), 神門 典子(国立情報学研究所)
10. 人文研究を支援するデータベースシステム-聖教検索および系図表示-
○朴明 哲(和歌山大学大学院), 森本 雅史, 立花 純児,
    村川 猛彦(和歌山大学),宇都宮 啓吾(大阪大谷大学), 中川 優(和歌山大学)
13:30〜14:10 論文賞表彰式 および 論文賞記念講演
14:15〜15:05 一般発表(4)
11. 科研費による研究助成の効果に関する調査
○柿沼 澄男, 西澤 正己, 孫 媛, 根岸 正光(国立情報学研究所)
12. キーワード分析による科研費におけるゲノムおよびナノテクノロジー
    関連研究の動向調査
○西澤 正己, 孫 媛(国立情報学研究所)
15:20〜16:35 一般発表(5)
13. 日本発行の科学技術雑誌数の分析
時実 象一(愛知大学)
14. 文化資源オントロジの構築とその活用
研谷 紀夫(東京大学大学院), 馬場章(東京大学)
15. ターミノロジー論における階層関係の概念について
山本 昭(愛知大学)
  • シンポジウム「Web2.0時代の情報システム」のパネリストである岡本さんは、大学などが公開しているデジタルコンテンツ、デジタルアーカイブについて調べる時には欠かせないAcademic Resource Guideの編集人。メーリングリストには今すぐ登録せよ(ブログのRSSとかを何かに登録してもいいけど)。下の本も有益:
  • 6の話は、古典テキストの校訂を著作物と認めるかどうか、という論点につながりそうなので興味深い。石岡克俊「音楽/楽譜の校訂と著作権法(前編) 校訂権とその周辺(その二)」(『漢字文献情報処理研究』7)参照。
  • 9、10、14は情報歴史学系の発表。特に10は、3回生ゼミでこの間読んだ系図のデジタル化の問題の続きなので、要注目。
  • 15の「ターミノロジー」とは、専門用語学とでも訳すことができるものだが、データベースでキーワード検索などの機能を開発する際、必ずドツボにはまるのがキーワード間の関係をどうやって記述するか、ということ。この問題に取り組んでいるのがターミノロジー。下記文献参照:
ということで、なかなか興味深い発表が多いのである。

Wednesday, April 25, 2007

mixiにコミュを作りました

mixiに「情報歴史学コース」コミュを作りました。
mixiのIDが欲しい人は招待状を送るので、連絡して下さい(入会したら携帯電話でもできるけど、登録にはパソコンのメールアドレスが必要なので注意)。

Wednesday, April 18, 2007

情報歴史学コース全体指導

学内掲示板に掲示が出ていると思いますが、来週火曜日18時から、情報歴史学コース所属学生全員(2〜4回生)と担当教員による全体指導を行います。
  • 日時:4月24日(火)18時〜
  • 場所:返照館302教室
情報歴史学コースでの授業や返照館302教室の使用などに関する大切な会議ですので、特別な理由がない限り欠席しないようにしてください。また、ゼミ旅行に関する打ち合わせも予定しています。

なお、全体指導終了後、懇親会を予定しています。

Tuesday, April 10, 2007

情報知識学会 人文・社会科学系部会研究会のご案内

以下の案内を頂く。博物館情報学はちょっと興味があるので、参加したいのだが、その日は仕事なんです(涙)。田良島さんは情報歴史学業界の重要人物(チープな表現ですいません)の一人。最近では、歴史地震史資料の電子化などでご活躍(http://sakuya.ed.shizuoka.ac.jp/rzisin/chikyu_0511.htmlなど参照)。

情報知識学会 人文・社会科学系部会研究会のご案内

しばらく研究会の開催が滞っておりましたが、新しい企画として「博物館と情報」をテーマに若手の研究者から話題を提供していただきます。広くご参加を歓迎いたします。(部会担当:田良島 哲)
日時
2007年4月21日(土)15:00~17:00(14:30受付開始)
会場
東京国立博物館 平成館小講堂(台東区上野公園13-9。博物館「西門」から入館してください)。
※交通と地図はこちら http://www.tnm.jp/jp/guide/index.html
プログラム
  • 15:00 主催者あいさつ
  • 15:05-15:45 「博物館・美術館におけるデジタル画像に対する意識について―館種、規模、デジタル化達成率の違いによる意識の差―」
    奥本素子(総合研究大学院大学 文化科学研究科)
  • 15:45-16:25 「人文系博物館の目録情報の現状―都道府県博物館への調査結果より―」
    北岡タマ子(お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科)
  • 報告終了後、自由討議
参加方法
どなたでもご参加いただけます。
参加希望の方は、stara@nifty.com(半角英数字)あて ご氏名・ご連絡先(email・電話・Fax等)をお知らせください。
文書でご連絡の場合は 110-8712 台東区上野公園13-9 東京国立博物館情報課気付 田良島 あて にお願いします。
※お預かりした個人情報は、次回以降のこの会合の連絡にのみ使用します。

Friday, April 06, 2007

Digital Humanities Quarterly

日本語訳すれば『季刊デジタル人文学』。人文学とコンピュータとの関わりについて幅広い視点から論じた論文をオンラインで公開する電子ジャーナル。英語だけど、がんばって読んでみる価値はあると思うぞ。

Digital Humanities Quarterly

日本アーカイブズ学会2007年度大会

日本アーカイブズ学会2007年度大会
  • 日時:2007年4月21日(土)13:00−17:00、4月22日(日) 9:30−18:00
  • 会場:学習院大学(JR目白駅下車5分)
詳しくはhttp://www.jsas.info/rightFrame/right1/070324/LatestN.htm参照。関西だったら行くのにね。

Monday, April 02, 2007

「美濃部家屋敷図」の出典など

情報歴史学研究室: 【講義メモ】コンピュータで遺跡を復元するで紹介した藤井君のCGについて、明石観光協会から問い合わせがあった。なんでも、明石の歴史について勉強されているボランティアガイドの方がこのブログを見て、どのような資料を使ったのか知りたいと観光協会に問い合わせをされた由。藤井君に代わり、観光協会の方には電話でご連絡をしたが、ブログでも答えられる範囲でお答えしたいと思う(以下の情報は藤井君の卒業論文に基づくものであり、このエントリを書くにあたって当該文献や明石市立文化博物館等を直接(再)確認しているわけではないので、そのあたりはご了承いただきたい)。

「美濃部家屋敷図」の出典

明石市立文化博物館『発掘された明石の歴史展―明石城武家屋敷跡―』(明石市立文化博物館、1996年)に掲載。

「美濃部家屋敷図」に東西南北の表示はあるか?

あります。

「美濃部家屋敷図」から敷地の広さ、縦横の長さなどはわかるか?

大雑把な情報は得られるが、正確な数値はわからない。CGを作る際には、発掘調査報告書などを利用している。いくつかあげると:
  • 明石市立文化博物館『明石市明石城武家屋敷跡 I』第1分冊(明石市教育委員会、1994年)
  • 兵庫県教育委員会埋蔵文化財調査事務所『明石市明石城武家屋敷跡』第109冊(兵庫県教育委員会、1992年)
  • 稲原照嘉「明石城の発掘調査」(『信濃』第52巻第10号、信濃史学会、2000年)
  • 前掲『発掘された明石の歴史展―明石城武家屋敷跡―』

建物の高さの推定

「美濃部家屋敷図」は平面図であるため、これからは高さなどは推定できない。しかしながら、幸いにして昭和初期の写真が残っており、塀の高さなどについては大まかに知ることができる(前掲『発掘された明石の歴史展―明石城武家屋敷跡―』所収)。それ以外には、現存する同時代の武家屋敷や、“建築指図”と呼ばれる史料(設計図みたいなもの)などから推定している。

この例に限ったことではありませんが、一般に「復元」と言っても、各種史資料を研究者が解釈し、多分に恣意を交えて構成したものであるということをご理解いただければ幸いです。

Saturday, March 31, 2007

CH74@滋賀

情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会が情報歴史学にとって重要な研究組織であることは、情報歴史学コースに所属している諸君であればすでに知っている(よね? (^_^;;)ことと思うが、その第74回研究発表会が、5月25日(金)、龍谷大学瀬田学舎(滋賀県大津市)で開催される。

プログラムやアクセス方法についてはリンク先からたどってほしいが、都合がつく学生は是非参加して、最先端の研究発表に触れてほしい。

この研究会は年に1度は関西で(つまり、花大の近郊で)開催されるが、この手の研究発表の場がこのように近場で開催されるということを当たり前だと思うのは間違いである。やはりこの日本は東京中心なので、一般的に言えば重要な学会や研究会、シンポジウムなどは東京で開催されることが多いし、場合によっては国外で開催されることも少なくない(可能ならば遠征もしてほしいけど)。それに対して、情報歴史学系の学会、研究会は割と関西で開催されることが多いので、地の利を活かして経験値を積んでほしいのである。

Saturday, March 17, 2007

2006年度学位授与式

今年も無事、3名の卒業生を送り出すことができた。卒業おめでとう!

卒業式の式辞と言えば退屈なものと相場が決まっているし、そもそも毎年卒業式に出続けている身としては(卒業生たちと違って)新鮮さもないわけだが、今日の同窓会長の式辞は、私が情報歴史学ゼミでずっと言い続けてきたことに重なるような気がして、ちょっと感慨深かった。

…臨済禅師がまだ若かった頃、ある寺の住職に手紙を届けるお使いを頼まれた。その寺に行って玄関番に手紙を渡すと、その玄関番は恭しく手紙を受け取った。そして玄関番は臨済に言った。「この手紙は確かに受け取りました。ところで、あなたの手紙は?」…

歴史研究においては客観的、実証的であること、主観的でないことが求められる。「君の考えを聞きたいわけじゃない、史料にはどう書いてある?」云々。一方、私はゼミで何度も「どうしてそれをやるのか?」「どうしてそのデータベースを作るのか?」を何度も問うてきた。玄関番の「あなたの手紙は?」とある意味同じだ。両者は一見対立するようだが、決してそうではない。

ともあれ、卒業おめでとう!

Wednesday, March 07, 2007

東洋学へのコンピュータ利用・第18回研究セミナー

京大で行われる毎年恒例の東洋学へのコンピュータ利用第18回研究セミナー(3月22〜23日)が開催される。プログラムはこんな感じ。
  • 22日
    • 13:30〜13:40 開会挨拶
    • 13:40〜14:20 曖昧な「唐代」概念…山田崇仁(京都大学)
    • 14:20〜15:00 唐代官制の概念モデリングの試み…白須裕之(京都大学)
    • 15:20〜16:00 「唐代の行政地理」に関する「史料」問題…牛根靖裕(京都大学)
    • 16:00〜16:40 唐代人物知識ベースの現在…山本一登(京都大学)
  • 23日
    • 10:30〜11:10 東洋学文献デジタルアーカイブの色彩学的諸問題…當山日出夫(花園大学)
    • 11:10〜11:50 人文科学研究におけるGoogle Earthの使い道…師茂樹(花園大学)
    • 13:10〜13:50 朝日字体の終焉…安岡孝一(京都大学)
    • 13:50〜14:30 インターネットリソースとしての仏教文献…永崎研宣(山口県立大学)
    • 14:30〜15:10 UCSの統合漢字から見る包摂規準…川幡太一
    • 15:30〜16:10 UCSにおける甲骨文字収録の意義と問題点…小形克宏(うさぱら)
    • 16:10〜16:50 インターネット・リサーチで文字用例をさがす…高田智和(国立国語研究所)
    • 16:50〜17:00 閉会挨拶
1日目は唐代知識ベース関連の特集である。中国史ではあるが、歴史学における知識(人名とか地名とか諸々の情報)を有機的に関連させながらコンピュータ上で表現するにはどうすればいいか、というような問題に取り組んでいる人たちによる報告である。情報歴史学的に、極めて重要な問題である。

2日目には私もGoogle Earthやら安土桃山時代の京都がらみで発表する。地理情報システム(GIS)を知識表現で使うには?みたいなことを話す予定。

情報歴史学コースの諸君には、是非参加してほしい。

Thursday, February 08, 2007

口頭試問終了

卒論の口頭試問が終わりました。以下、簡単に総評。

大亀さんの「確率統計的分析による大工道具の地域的分布の研究」は、大工道具の寸法や地域などに関するデータベースを作成し、それを相関分析やクラスター分析などをすることによって、地域差を見いだしたり、地域が不明な大工道具について推定してみようというもの。物質史料の計量的研究として方法論的に枯れている(確立している)し、レコード数も5,580件と個人レベルではかなり多いので、ベースは高く評価できる。一方、実際の分析においては、例えば高い相関が出ているデータについてどのように解釈するか、などの点が抜けており、本格的な研究はこれからという感じである。また(大亀さんも認識していることだが)最終的には地域的な分布だけでなく、歴史的な変遷などにも目を向けなければならないだろうし、本格的な研究にはサンプル数も偏りなく、もっと多い方がいい。卒論にそんなハイレベルなことを求めるのは酷かもしれないが、逆に言えばそのような発展が容易に想像できるぐらいの質の高いデータベースであるとも言える。

林さんの「ケガレ研究文献データベースの作成 〜学際的交流を目指して〜」は、従来、歴史学、民俗学、宗教学、人類学、社会学、文学、部落問題研究などの様々な分野で議論されてきた「ケガレ」の問題について、学際的な交流が必要だという問題意識の下、それを活発化させるためのシステムのプロトタイプを作ってみました、というもの。研究文献データベースを軸に、最近流行の集合知を実現するための仕組みとして、コメント機能を追加した。集合知については大向一輝「Web2.0と集合知」にあるように、単にコメントがつけられるだけでなく、集約性が重要である。しかしながら、林さんのシステムではコメント機能しかなく、各分野の「ケガレ」概念を統合したり、共通認識を醸成するような仕組みが明示的には存在しない。また、データの件数も、研究者を集めるためには少ないと言わざるを得ず、今後の開発にかかっていると言える。

大本さんの「前田利家に関する論文・書誌データベース」は、前田利家関連の書籍にマンガや一般書、観光案内のようなものが多く、歴史研究者、特に初学者にとって情報を収集しやすい状況ではないという状況を踏まえ、主に歴史研究を始めたばかりの学生を対象に前田利家に関する学術論文のデータベースを構築した、というもの。コンセプトは理解できるが、このコンセプトを実現するための方法に問題があるように思われる。すなわち、コンセプトを明確にするために、データベースに収録する対象(論文など)と利用者を厳しく限定した結果、レコード数が少なく、一部の人(花園大学史学科の学生)しか利用できないものができあがってしまった。せっかく作ったものも、利用されないのでは意味がない。むしろ、データ化の対象や利用者の制限を緩くして、コンセプトにあった絞り込みが可能なデータベースにした方がよかったのではないだろうか。

Wednesday, February 07, 2007

シンポジウム「知の構造化と図書館・博物館・美術館・文書館」

東京大学創立130周年記念公開シンポジウムだそうです。「図書館・博物館・美術館・文書館における知の組織化」がテーマらしい。シンポジウムのタイトルには「構造化」とあり、趣旨説明には「組織化」とあるが、「構造化」と「組織化」は同義語ということなのだろうか?

それはともかく発表内容はというと、
  • 早乙女雅博(人文社会系研究科)「高句麗古墳壁画の模写資料」
  • 馬場 章(情報学環)「文化資源統合デジタルアーカイブの試み」
  • 石川徹也(史料編纂所)「学術活動成果の集積としての知識データベース」
ということで、かなり情報歴史学的である。ぜひ聞きにいきたいところだが、2月17日に東京出張は無理だなぁ。

Sunday, February 04, 2007

情報歴史学の教育に挑む

国立歴史民俗博物館が発行している『歴博』No. 140は、特集「コンピュータ歴史学の歴史」である。
  • [巻頭言]鈴木卓治「地道にそして着実に」
  • 田良島哲「コンピュータ、ネットワークと歴史研究 —これまでとこれから—」
  • 横山伊徳「私のデジタル化戦略 コンピュータで史料編纂所の二〇年を歩む」
  • 師茂樹「情報歴史学の教育に挑む」
  • [コラム]照井武彦「歴博コンピュータ奮戦記」
  • [コラム]五島敏芳「真の〈デジタル〉アーカイブ構築への挑戦 —資料目録電子化の現場から」
どれも興味深い記事であるが、その中で私も情報歴史学コースのことについて書かせてもらっている。原稿締切が去年の秋だったので、紹介しているゼミ生諸君の研究テーマも2005年度卒業生のもの(川畑君の「織田信長と朝廷に関する論文データベース」と藤井君の「明石城武家屋敷の3D画像作成」)や、研究会で作ったQRコード+携帯電話の博物館閲覧支援システムなど)が中心である。

この中では、「情報歴史学は補助学か?」という問い(この問いについては、ゼミの中で何度か議論したことであるが)に、次のように答えてみた。
筆者の考える情報歴史学は、まず第一には、歴史学のある研究分野の方法論や伝統について分析し、それをコンピュータを使って記述する(≒データベースを作成する)という学問である。それは、対象となった研究分野の研究者から見ればツールが提供されたように見えるだろう。しかし、データベースとして表現された方法論や伝統が暗黙のものであった場合、それが視覚化されることによって新たな議論、すなわち方法論的な反省が発生する契機となる場合もあろう。それをふまえて第二には、従来の研究方法を相対化できるような新しい方法を模索し、それによって歴史学の研究を行うことである。以上のことから、筆者は、情報歴史学は補助学ではないと考えている。

私が書いた記事以外も(の方が?)おもしろいので(横山先生のはなんとパンチカードから!)読んでみてほしい。

なお、情報歴史学コースについては、他にも以下のような紹介記事があったりする。

Tuesday, January 30, 2007

日本史の一級史料

山本博文氏の『日本史の一級史料』(光文社新書)は、全体的に薄味な感じで、まとまりも感じられないが、文献史学という分野をほとんど何も知らない人が、どんなことをしているのかを(近世史中心だが)イメージするのにはいいかもしれない。また、東京大学史料編纂所でどんな活動をしているのか、『大日本史料』などがどんな感じで編纂されていて、データベースがどのように作られているのかなどが、簡単に紹介されており、最初のとっかかりの本として有用だろう。



史料編纂所のデータベースを含む文献史学系のデータベースについてもう少し詳しく知りたい場合には、ちょっと古いけど『人文学と情報処理』25(特集:歴史学系データベースと文字コード)とか『人文学と情報処理』22(特集:日本史研究の情報化)あたりでまとまって読める。あとはいろんな雑誌や書籍にバラバラに入ってたりするので、探してみよう(情報処理学会・人文科学とコンピュータ研究会研究報告やシンポジウムの論集などから始めるのが吉)。

Tuesday, January 23, 2007

【シンポジウム】「文理融合」による新「知識資源学」の創成

3月1〜3日に行われる東京工業大学のイベント。
おもしろそうな発表があるので、大学の行事がなければ行きたいところだが。

ところで、ここで言う「文理融合」というのはどういう意味なのだろう。このイベントに限らず、いろいろなところで「文理融合」という宣伝文句を聞くようになったが、理系の人が文系の人の研究対象を理系の方法で研究する、というのが多いように思う。でも、方法が理系ならそれは理系の研究だよなぁ、と思う——例えば、歴史学の人がコンピュータの歴史を研究しても「文理融合」とは言わないように。

私個人の考えでは、情報歴史学は「文理融合」ではない。もうちょっと正確に言うと、そもそも文・理は「融合」させなければいけないほど離れたものではなく、対象も方法も重なっているところが多い。ところが各分野の専門化、細分化、蛸壺化が進んで、「重なっているところ」が見えにくくなってきた。ところがコンピュータの登場によって、「重なっているところ」が見えやすくなった。情報歴史学はその部分なんだろうと思う。

以下にあげる本は、文学の研究書だけれど、そういう「重なっているところ」的な雰囲気に溢れたものでおすすめである(ちなみに、物語理論は歴史学においても重要なので、おさえておきたいジャンルである)。



ちなみに、翻訳した岩松先生は国文学科で非常勤講師をされている。実はこっそり花大系なのである。