Sunday, November 12, 2006

電子メディアを飼いならす

以前紹介した情報歴史学研究室: ベトナムの祖先祭祀情報歴史学研究室: マルチメディアによる民族学で述べたマルチメディアによる民族学での研究は、要するに様々な媒体の記録や資史料(文字、写真、音声、動画)をコンピュータ上でまとめた、という感が強い(1990年代のマルチメディア・ブームが影響しているのであろう)。

しかしながら、この手の研究はその後興味深い展開を見せる。単に便利なツールとしてメディアを使うのではなく、そもそも現代の様々なメディアで民俗学・民族学・文化人類学が対象とするような情報が流通し、研究者だけでなく研究される側(伝統芸能の担い手とか)もそれを受容している(場合によっては積極的に活用している)という状況をどう考えるべきか、あるいは、例えばマルチメディアを使って民族学等の情報をインターネットで流すという行為は何を意味するのか、というような問題が検討されるようになったのである。代表的な本を一冊、紹介しておこう:



このような問題の一端については、授業で新谷尚紀「映像民俗誌論―『芸北神楽民俗誌』とその制作の現場から―」(『民俗学の資料論』、吉川弘文館、1999)をとりあげた際にも議論したし、私もいくつか発言をしている(赤間亮・川村清志・後藤真・野村英登・師茂樹「人文科学にとっての“デジタルアーカイブ”」〔『人文科学とコンピュータシンポジウム 論文集』、2004〕、師茂樹「「デジタルアーカイブ」とはどのような行為なのか」〔『情報処理学会研究報告』Vol. 2005, No. 51 (2005-CH-66) 一部訂正あり〕)ので参照してもらいたい。

この本に収録されている論文の多くは、クリフォード・ギアーツの『文化の読み方/書き方』を参照している。読みやすい本なので、こちらもぜひ読んで欲しい。



「文化を書く」ということは、民俗学などだけの問題ではない。歴史学全般、ないし人文学全般に関連する問題である。情報歴史学でやっている、例えば遺跡の3D再現などはまさに「文化を書く」という行為そのものだ。我々は「電子メディアを飼いなら」しつつ、「文化を書く」ことについて考え、実践しなければならないのである。

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