Sunday, October 19, 2008

史料学・史料編纂における知識論的転回

国立情報学研究所の情報とシステム2008というイベントで、情報歴史学系の講演があるようなので、紹介しておきたい:
  • 横山伊徳(東京大学 史料編纂所 教授 所長)
    「史料学・史料編纂における知識論的転回について —記録史料管理論と歴史知識管理論のはざま—」
  • 柿沼澄男(国立情報学研究所 情報社会相関研究系 教授)
    「人文・社会科学と情報学の共同研究」
このうち横山先生は、以前配布した『歴博』140号(私の「情報歴史学の教育に挑む」も載っています (^_^;;)にも回顧記事を書いている、日本史学におけるコンピュータ利用の先駆者の一人。
  • 横山伊徳「私のデジタル化戦略 コンピュータで史料編纂所の二〇年を歩む」(『歴博』140号、2007年)
タイトルの「知識論的転回」は、20世紀末の(っていう言い方は語弊があるかな)歴史学における言語論的転回という方法論的な変化をふまえていると思われる。歴史学における言語論的転回については、以下の論文が参考になる。
  • 北條勝貴「言語論的転回と歴史認識/叙述批判—現状の整理と展望—」(『GYRATIVA』1号、2000年)
『GYRATIVA』は花大図書館にある。この論文の概要は以下の通り。
アナール学派をはじめとする〈新しい歴史学〉の潮流以降、歴史学という学問分野の枠組みを相対化し、理論的に激しく動揺させた問題に、主にアメリカを舞台に惹起した〈言語論的転回〉による歴史認識・歴史叙述批判がある。それはポスト・モダニズム的テーゼに触発された素朴実証主義批判で、ダントやホワイトによって歴史の物語性が暴露されたことに端を発し、ラカプラの主導により伝統的歴史学やアナール学派的社会史への激しい攻撃へ成長した。これらのなかで示された議論の大半は、歴史学者の経験主義、自己の分野のみにしか通用しない閉鎖的価値観・基準に基づいており、言語論的転回の根本的批判力には答ええていなかった。この論争を流行に終わらせることなく、歴史学が自らの方法を批判する認識論的基盤を、隣接諸科学の診断基準にも対応しうるものとして確立してゆくことが急務である。

上の概要で名前が出ているダント、ホワイト、ラカプラの本をあげておく:




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