
カルタはカルタなのでそれなりにおもしろいが、しかし、空中散歩については不満も多い。せっかく史跡の上空まで連れて行ってもらい、そこを拡大して表示しても、史跡などの名前と2, 30文字程度の情報、歌人関係であればその和歌の朗詠などが得られるだけで、それ以上深い情報は何も得られない。
同様に、平安京の画像がほんの十数秒(計ったわけではないけど、そんな印象)で消えてしまうのは残念至極。私たちを含めた来場者の多くは、「お、花大はここだ」とか、「ここな、ここな、うちが出た小学校やねん」とか、要するに現代の京都の地図を楽しんでいるだけで、小倉百人一首のアトラクションを楽しんでいるという意識が希薄ではなかったろうか。そもそも、小倉百人一首の編纂において嵐山にゆかりがあるだけで、歌人たちは飛鳥やら奈良やらいろいろいたわけなのだから、京都の空中散歩をする必然性もあまりないと言えばない。現代の京都の空中散歩と、小倉百人一首の編纂された当時の文化や、収録された和歌そのものまでを連続させるには、もう何段階か橋渡しとなるようなコンテンツが必要ではなかったろうか。

もっとも、この時雨殿を建てた財団法人 小倉百人一首文化財団(京都商工会議所の120周年事業だそうで)のキャッチフレーズが「新たな日本文化の創造」であることを考えると(実際、この財団のフォーラムでは、百人一首の枠を超えたコラボレーションが展開されているようだし)、このアトラクションも何か新しいものを生み出そうとしているのかもしれない。アートの大切さで述べたような問題について、また色々考えさせてくれるという点では、収穫も大きかった。
他にも色々あったけど(非デジタル系では、愛国百人一首が面白かったな)、また皆で見に行きましょう。批判的なことばかり書いちゃったけど、学術系データベースの質実剛健な (^_^;; 外見を見慣れた目には、あの高いクオリティは感動します。